人形町耳鼻咽喉科めまいクリニック
めまいの外来・耳鼻咽喉科・漢方耳鼻咽喉科
〒103-0013 東京都中央区日本橋人形町2-35-5
DJK人形町ビル3階
TEL: 03-3527-2501
めまいは多くの方が経験する身近な症状ですが、原因がはっきりせず、「またいつ起こるか」と不安を感じる方も多いのではないでしょうか。 今回は、そのような方に向けて、自律神経の乱れが原因で起こるめまいについて、専門医の視点からわかりやすく解説します。
・自律神経の乱れでめまいが起こる仕組み
・症状から考えるめまいの種類
・めまいを放置した場合のリスク
・自分でできるセルフケアと対策
など、知っておきたい情報を網羅的に紹介します。 めまいに関する正しい知識を持つことは、つらい症状を改善し、安心した毎日を取り戻すための第一歩となります。ぜひ最後までご覧ください。
監修:岩崎朱見(人形町耳鼻咽喉科めまいクリニック)
東京都中央区日本橋人形町にて、「人形町耳鼻咽喉科めまいクリニック」の院長を務める医師。めまい治療を専門とし、地域医療に貢献している。
経歴 | ・東京医科歯科大学(現:東京科学大学)医学部附属病院 耳鼻咽喉科 助手 ・中野総合病院 耳鼻咽喉科医長 ・JCHO東京高輪病院 耳鼻咽喉科医長 ・東京医科歯科大学耳鼻咽喉科臨床講師 ・都立駒込病院 耳鼻咽喉科・頭頸部腫瘍外科 医長 |
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所属学会・資格 | ・日本耳鼻咽喉科学会認定専門医・指導医 ・めまい平衡学会認定めまい相談医 ・日本耳鼻咽喉科学会認定補聴器相談医 ・厚生労働省認定補聴器適合判定医 ・身体障害者福祉法第15条指定医 ・耳鼻咽喉科難病指定医 |
「急に立ち上がるとクラっとする」「何もしていないのに、ふわふわとしためまいが続く」 そんなめまいは、自律神経の乱れが原因かもしれません。
ここでは、なぜ自律神経が乱れるとなぜめまいが起こるのか、そのメカニズムを分かりやすく解説します。
私たちの体には、内臓の働きや血流、体温などを24時間自動でコントロールしている「自律神経」という重要な神経があります。自律神経は、体を活動的にする交感神経と、体をリラックスさせる副交感神経の2つがバランスを取り合うことで、心身の健康を保っています。
しかし、強いストレス、睡眠不足、ホルモン変動などによってこのバランスが崩れると、体に様々な不調が現れます。めまいは、その代表的なサインの一つなのです。
自律神経の乱れがめまいを引き起こす主な原因は、大きく分けて2つあります。
交感神経が長時間優位になると、血管はギュッと収縮し血圧が上昇します。その結果、全身の血行が悪くなり、とりわけデリケートな内耳(バランス感覚をつかさどる器官)への血流が不足しがちに。
酸素も栄養も届きにくくなった内耳はセンサー精度を落とし、脳に「今、体がどう傾いているのか」を正しく伝えられなくなります。この情報の乱れが、ふらつきや回転性めまいとなって現れるのです。
自律神経失調は、内耳だけでなく前庭神経や小脳など平衡感覚ネットワーク全体の働きにも影響を及ぼします。三半規管や耳石器から脳へ送られる情報が誤作動を起こすと、脳は姿勢や動きを誤認識し、「揺れている」「回っている」といった錯覚を生み出します。
この時、脳は同時に吐き気や冷や汗を引き起こす〈前庭自律神経反射〉を誘発するため、めまい+吐き気という二重苦に襲われることも少なくありません。
このように、自律神経の乱れによるめまいは、「血流の悪化」と「前庭系の機能低下」という2つの側面から引き起こされます。そして、その根本には、心身にかかる過剰なストレスが大きく関わっているケースが非常に多いのです。
一言で「めまい」といっても、その感じ方や症状が現れるタイミングは人によって様々です。自律神経の乱れが原因で起こるめまいには、いくつかの特徴的なタイプがあります。
ご自身の症状がどれに当てはまるか、チェックしてみましょう。
自律神経の乱れによるめまいは、耳の病気で起こるような「天井がぐるぐる回る」といった激しい回転性のめまいとは異なり、以下のような特徴を持つことが多くあります。
・体がふわふわと浮いているような感覚
・雲の上や船の上にいるように、足元がおぼつかない
・まっすぐ歩きにくい、左右に揺れる感じがする
これが自律神経の乱れによるめまいで最も代表的な症状です。「めまい」というより「ふらつき」と表現される方もいらっしゃいます。症状の強さには波があり、数分で治まることもあれば、一日中、あるいは何ヶ月も続く慢性的な不調に悩まされる方も少なくありません。
・立ち上がった瞬間にクラっとする、気が遠くなる感じ
・急に振り返ったり、上を向いたりした時にめまいがする
これは、急な体勢の変化に自律神経の調整が追いつかず、脳への血流が一時的に低下することで起こるめまいです。自律神経のバランスが乱れていると、本来働くべき血圧の調整機能がうまく作動せず、このような症状が出やすくなります。
めまいは、様々な身体の不調を伴うことがあります。以下の症状は、めまいと一緒に出やすい傾向があります。(自律神経に起因するめまいかどうかに限りません。)
・多汗、寝汗、冷や汗
・手足の冷えやしびれ
・全身の倦怠感、疲労感
・不眠、朝起きられない
・不安感、気分の落ち込み
もし、あなたのめまいがこれらの症状のいずれかと一緒に現れることが多いなら、めまいだけでなく、他の身体の不調も抱えている可能性があります。その中には、自律神経の乱れが関係しているケースも少なくありません。
以下のような状況では、めまいの症状が出やすくなったり、悪化したりすることが知られています。
・ストレスを感じている時、緊張する場面
・仕事が忙しい、疲れがたまっている時
・寝不足が続いている時
・天候や気圧が大きく変化する時
これらはいずれも交感神経が優位になりやすく、自律神経のバランスが乱れがちなタイミングです。
これらの症状やタイミングに心当たりがある方は、単なる「めまい」として片付けるのではなく、身体全体からのSOSサインである可能性があります。
自己判断で「大丈夫だろう」と決めつけず、つらい症状が続く場合は、原因を正しく突き止めるためにも、一度専門医に相談することをおすすめします。
「いつものことだから」「少し休めば治る」と、自律神経の乱れが関係するめまいを軽視してはいませんか?
その一時的な不調を放置することで、将来的に2つの深刻な問題を引き起こす可能性があります。
めまいは、原因となっている問題が解消されない限り、自然に治ることが難しい場合があります。
最初は一時的だっためまいも、繰り返すうちに脳がその状態に慣れてしまい、症状が慢性化していく可能性があります。
・「また、あのめまいが起きるかもしれない」という予期不安
・外出や乗り物に乗ることへの恐怖
・仕事や学業への集中力低下
・不安感から、うつ病や不安障害など心の不調につながる
このように、QOL(生活の質)が著しく低下し、普通の毎日を送ることが困難になってしまうケースは少なくありません。
めまいがあった際には、耳からの影響も考えられます。また、自律神経の乱れが耳の症状に影響を与えることもあります。そのため、めまいを感じたら、一度耳鼻咽喉科を受診し、専門医に相談することをお勧めします。
めまいは、体からの重要なSOSサインです。特に注意が必要なのは、その背景に、より重い病気が隠れている可能性です。
近年の研究では、立ち上がった時に強いめまいや立ちくらみが起こる「起立性低血圧」を伴う自律神経の不調が、将来的にパーキンソン病、レビー小体型認知症、多系統萎縮症といった神経の難病(神経変性疾患)の初期症状の場合があることが指摘されています。
実際に、純粋自律神経不全症(起立性低血圧などを主症状とする病気)の患者さんのうち、約34%が4年以内にこれらの神経難病といずれかを発症したという海外の研究報告があります。
もちろん、自律神経のめまいを感じる方すべてが、このような重篤な病気になるわけではありません。しかし、「たかがめまい」と放置することが、将来の健康に対する大きなリスクを見逃すことに繋がりかねないのです。
めまいを放置することは、今のつらさを長引かせるだけでなく、将来の健康を脅かす可能性もはらんでいます。症状が軽いうちに、また、繰り返しめまいを感じるようであれば、できるだけ早く専門医に相談し、適切な診断と治療を受けることが何よりも大切です。
前の章でめまいを放置するリスクについてお伝えしましたが、「そうは言っても、今このつらい症状を少しでも和らげたい」と感じるのは当然のことです。
ここでは、普段からめまいが起きにくい体を作るためのセルフケアをご紹介します。ただし、これらは根本的な治療ではなく、あくまで症状を一時的に軽くするための対症療法です。根本改善のためには、必ず専門の医療機関を受診するようにしてください。
めまいが起きにくい体質に整えていくためには、日々の生活習慣を見直すことが不可欠です。
・太陽の光を浴びる
朝に朝日を浴びることで、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌が適切に調整され、体内時計が整いやすくなります。体内時計が整うと、自律神経のバランスも安定しやすくなります。
在宅で室内にいることが多い場合は、意識して昼間にも適度な太陽の光を浴びるようにしましょう。
・規則正しい生活リズムを整える
毎日同じ時間に起き、同じ時間に寝ることを基本に。体内時計が整うと、自律神経のバランスも安定しやすくなります。
・栄養バランスの良い食事を心がける
1日3食を基本とし、特に自律神経の働きを助けるビタミンやミネラル、血流を良くする鉄分などを意識して摂りましょう。
・適度な運動を習慣にする
ウォーキングやストレッチなど、心地よく続けられる運動は血行を促進し、ストレス解消にも効果的です。
・ストレスを上手に解消する
ぬるめのお湯にゆっくり浸かる、好きな音楽を聴く、アロマを焚くなど、自分が心からリラックスできる時間を作りましょう。
・筋弛緩法で緊張をほぐす
無意識に入っている体の力みや心の緊張をリセットするのに効果的なのが、この筋弛緩法です。意図的に体に力を入れて抜き、その弛緩した感覚を味わいます。
・スマホやPCとの付き合い方を見直す
長時間のデジタルデバイスの使用は、首への負担やブルーライトの刺激で自律神経を乱します。こまめに休憩を挟み、画面から目を離す時間を作りましょう。
これらのセルフケアは、症状の緩和や予防にとても有効です。しかし、これだけで乱れてしまった自律神経の機能を根本から立て直すには限界があることも事実です。
当院では、患者さま一人ひとりに合わせたオーダーメイドの治療方針を立て、診療を行っております。
治療では、西洋医学だけでなく漢方投薬も取り入れ、症状にとらわれず生活習慣やお身体全体の状態を多角的に把握することを重視しています。
治療の選択肢については分かりやすくご説明し、十分にご納得いただいたうえで進めてまいりますので、どうぞご安心ください。
ふらつきやめまいでお困りの方は、お気軽にご相談ください。
当院の受診方法はこちらをご確認ください。
【参考文献】